今昔狐物語
「今の時間も忙しいのよ?」
一人で部屋を掃きながら少し口を尖らせる。
「確かに、掃除やら着付けの手伝いやら芸事の練習やらで…貴女には息抜きの暇がありませんね」
蛍のように振袖新造と呼ばれる遊女は、末は花魁(オイラン)と見込まれた存在だ。
そのため、容姿の良さだけでなく教養も必要とされ、見習いの頃から様々な事を叩き込まれる。
和歌や書道はもちろん、茶道や三味線、囲碁なども打つ。
「わっちらは男に抱かれるだけの人形ではありんせん――」
「蛍殿?」
「夕霧姐さんが言ってたの。確かに身体目当ての人もいるけど、それだけじゃないって。私達の仕事はお客様を楽しませて、一時でも浮世の憂いを忘れさせてあげることだって。最高の夢を見せてあげるためには、知識も品格も必要だから、しっかり励めって教えられたわ」