今昔狐物語

「今の時間も忙しいのよ?」

一人で部屋を掃きながら少し口を尖らせる。

「確かに、掃除やら着付けの手伝いやら芸事の練習やらで…貴女には息抜きの暇がありませんね」

蛍のように振袖新造と呼ばれる遊女は、末は花魁(オイラン)と見込まれた存在だ。

そのため、容姿の良さだけでなく教養も必要とされ、見習いの頃から様々な事を叩き込まれる。

和歌や書道はもちろん、茶道や三味線、囲碁なども打つ。


「わっちらは男に抱かれるだけの人形ではありんせん――」

「蛍殿?」

「夕霧姐さんが言ってたの。確かに身体目当ての人もいるけど、それだけじゃないって。私達の仕事はお客様を楽しませて、一時でも浮世の憂いを忘れさせてあげることだって。最高の夢を見せてあげるためには、知識も品格も必要だから、しっかり励めって教えられたわ」


 
< 135 / 277 >

この作品をシェア

pagetop