今昔狐物語
蛍の姐、夕霧はとても品格があり器量よしで知られるここの花魁だ。
蛍は夕霧の言葉を懐かしむように目を閉じた。
「私ね、実家がとっても貧乏で…小さい頃にここへ売られてきたの。昔はすごく泣き虫で……最初は、いつも泣いてた。母さんや父さんに会いたくて…。家に帰りたかったけど、抜け出せないって知って絶望した日もあったわ。だけどね…」
開かれたまぶたの下に宿る清んだ瞳が、水真馳を真っ直ぐ捉えた。
「夕霧姐さんが、死んだような目をしてた私をひっぱたいてくれたの。苦界に来た以上、私がやるべきことは一つだって」
――最高の女になりんさい
そう言われて、心に火が点った。
――己を磨き、己に自信が持てるような、立派な女になりんさい