今昔狐物語
決して「遊女になれ」とは言わなかった夕霧。
「姐さんは、私がここで生きるための目標を教えてくれたの。私の心を、生かしてくれたの…」
蛍にとって、夕霧は恩人であり尊敬する人物であり、いつの間にか母親のような存在ともなった。
だからこそ、蛍は彼女の言葉を素直に受け止められる。
「気高いですね…」
静かに蛍の声に耳を傾けていた水真馳が、ぽつりと呟いた。
「そうよね。夕霧姐さんは気高いわ。私の自慢の姐さんよ」
笑顔の蛍に、水真馳は小さく首を横へ振った。
「いえ、彼女だけではなく…貴女自身も含めて、ですよ」
「え…」
「その考えを素直に受け入れられる蛍殿も、とても気高い…」
水真馳の金色の瞳が熱を孕んだような輝きを見せた。
「女郎など、平然と惚れたなんだと嘘を言う女性ばかりかと思っていましたが……こんなに貴い女性もいたのですね」