今昔狐物語

包み込むように、水真馳の手が蛍の頬に触れる。

間近で見つめ合う二人。



「蛍殿なら、きっとなれますよ」


――最高の女性に…


その台詞を告げられたと同時に唇を奪われ――。


「蛍?いるかい?ちょっと部屋に来て手伝っておくれ」

がらっと襖を開けて夕霧が入ってきた。

「え!?あ、姐さん…!」

「どうした?」

頬を真っ赤に染めて唇を隠す妹女郎の挙動不審に首を傾げる夕霧。


(水真馳は…!?)


キョロキョロと確認するも、部屋の中に水真馳の姿は見当たらないので安堵する。

おそらく、間一髪で家具に化けたか逃げたかしたのだろう。

水真馳が急にいなくなるのにも、最近では慣れてきた蛍だった。


(またね、水真馳)


心の中で別れを告げ、夕霧について部屋から出ていった。






 
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