今昔狐物語


 今日は馴染みが重ならなかった。

夕霧と共にお座敷へ出てお客に笑顔をふりまきつつ、姐さんのことを注意深く観察する。


「久しぶりでありんすな。主様のことをずっと待っていたでありんすよ」


(あ、姐さんの口説が始まった)


花魁の傍で見習いをするのは、手練手管を学ぶためでもある。

姐さんの口説き文句を実際に聞いて、見て、これからに活かす。

客をとるようになると、この手練手管の方法によって人気が上下するからだ。

上手ければ人気は上がるし、下手なら客がつかなくなる。


(姐さん、やっぱりすごいな。久々の主様に少し拗ねてるのかと思ったら、ちょっと甘えて気をひいてみたり)


自分にこんな微妙な駆け引きができるようになるのだろうか。

まだまだ学ぶことはいっぱいだ。

蛍はお酌をしつつも、意識は常に夕霧に向けていたのだった。



 
< 140 / 277 >

この作品をシェア

pagetop