今昔狐物語
今日は馴染みが重ならなかった。
夕霧と共にお座敷へ出てお客に笑顔をふりまきつつ、姐さんのことを注意深く観察する。
「久しぶりでありんすな。主様のことをずっと待っていたでありんすよ」
(あ、姐さんの口説が始まった)
花魁の傍で見習いをするのは、手練手管を学ぶためでもある。
姐さんの口説き文句を実際に聞いて、見て、これからに活かす。
客をとるようになると、この手練手管の方法によって人気が上下するからだ。
上手ければ人気は上がるし、下手なら客がつかなくなる。
(姐さん、やっぱりすごいな。久々の主様に少し拗ねてるのかと思ったら、ちょっと甘えて気をひいてみたり)
自分にこんな微妙な駆け引きができるようになるのだろうか。
まだまだ学ぶことはいっぱいだ。
蛍はお酌をしつつも、意識は常に夕霧に向けていたのだった。