今昔狐物語

暗闇に光が差し込んだ。

「蛍!!!!」

勢いよく襖が開かれる。


(あ…水、真馳)


そこにいたのは人の形をした水真馳だった。

「貴様!!蛍から離れろ!!」

普段から丁寧な言葉使いの彼が、我を忘れたように怒りを露わにして怒鳴っている。

「ちっ!邪魔しやがって…!」

水真馳は歯ぎしりする男の首根っこをむんずと掴むと、ズルズルと廊下に引きずり出した。


「蛍は私が見初めた娘だ。貴様ごときが汚していい花ではない」

ドサリと投げ捨てられて廊下に尻餅をつく男を上から見下ろす。

金色の瞳が射殺すような眼差しを向けた。

「ひっ!!」

さすがに怯んだのか、男は恐怖にガタガタと震え出した。

と、その時。

バタバタと足音を響かせて妓楼で働く若い衆が廊下を駆けて来た。


 
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