今昔狐物語

「どうした!?」

「大声が聞こえたが?」

やって来た二人の男に、水真馳が事情を説明する。

振袖新造を犯そうとしたことを告げると、その客はすぐさま捕まえられた。



 一階に連行される男を見送りながら、蛍は呼吸を整えた。


(こ、怖かった…)


涙がにじみそうになる目を擦り、何でもなかった表情を作ろうと頑張っていると、優しい声が降ってきた。

「蛍殿、大丈夫ですか?立てますか?」

床にへたりこんだままだった蛍を気遣って手を差し延べる水真馳。

「水真馳…どうして、ここに…?」

「私は狐ですよ?人より耳がいいんです。貴女の声が聞こえたので、飛んできました」

にこやかに笑む彼に、安心する。

蛍は堪えていた涙が頬を伝うのを感じた。


 
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