今昔狐物語



 数分後、誰もいない空き部屋を見つけた蛍は、静かにそこへ入った。

すると、待っていたかのように狐姿の水真馳が現れる。


「こんにちは、蛍」

いつも通り、にこやかな水真馳。

そんな彼に、蛍はそれとなく不安をぶつけてみた。


「今日ね、これから突き出しがあるの」

「突き出し?」

「七日の間、私と姐さんが花魁道中をするのよ。今までも姐さんの後にくっついて歩いたことはあるけど…今回は私が主役だから、緊張する」

花魁である夕霧がすぐ後ろにいるとはいえ、中心はあくまで蛍だ。

緊張しないわけがない。

「蛍が主役ですか。これは見物する価値がありそうですね」

「………水真馳、わかってる?私が主役ってことは…その…」

「え?」

何か言いにくそうに口ごもる彼女に、水真馳は首を傾げた。


 
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