今昔狐物語

こんな形で浮き彫りにされるとは思わなかった。

「はぁ…」

自嘲ぎみに息を吐き出す。


(蛍に怒りを覚えるのはお門違いですね。私が愚かなことを言ったせいなのだから…)


よく考えればわかることだった。

蛍には、姐女郎の夕霧が示してくれた目標があるのだ。


――最高の女になりんさい


彼女は幼少期から今まで、そのためだけに自分を磨いてきた。

学問や芸事に一生懸命取り組む蛍をこの目で見たではないか。


(私は、貴女のこれまでの苦労や努力を全て水の泡にする提案をした…最低な男ですね…)


揺れる水真馳の瞳に少女が映る。

まだ年若い、無垢な少女の横顔。


(けれど……それでも、私は…)


最低に成り下がっても、手に入れたい。

たった一つの美しく健気で、気高い花を…。






 
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