今昔狐物語
「み、まちぃ…っ」
その瞬間、蛍はボロボロと泣き出した。
化粧が崩れるのも構わず、心のままに涙を溢れさせる。
それを見て、なぜか水真馳が慌て出した。
「蛍?え…な、なぜ泣いて!?あのっ…泣き止んで下さい…!ほら、何もしませんから!ね?」
「泣き叫ぼうが連れ去る」などと豪語していた彼だが、どうやら女の涙、否、蛍の涙に弱いようだ。
水真馳はよしよしと蛍の額を撫でた。
そんな彼から、先程までの威圧感は消えている。
(うれしいっ…水真馳…!)
やっと彼の思いを知ることができた。
(その言葉だけで、私は――)
少し涙が落ち着いたところで、蛍は真っ直ぐ水真馳を見上げた。
「水真馳、ありがとう……でも、ごめんなさい。私は、貴方と一緒にはなれない」
「なぜ!?」
はっきりとした拒絶に、水真馳の顔が青くなる。
彼は焦った表情で蛍の肩を掴んだ。
「私、まだ何にも返してないのよ。今までは見習いだったから稼げなかったけど…。母さんと父さんの借金、今日から自分でお客をとって返さなきゃ。ここで逃げ出したら、両親を裏切ることになってしまう」