今昔狐物語
「………親のため、ですか」
どこか嫌みぽっく水真馳は笑った。
「ふっ…健気ですね。自分の娘を売った両親ですよ?」
「仕方なくよ。母さんは、私に幸せになってほしいって、いつも言ってた。そんな親が、好きで娘を手放すわけ…ないよ…」
しぼんでいく蛍の声に、水真馳は後悔した。
「……すみません。言い過ぎましたね」
うなだれる彼に蛍は優しく言った。
「ううん。いいの」
それから水真馳を上向かせると、彼の瞳から少し視線を反らし、言いにくそうに口を開いた。
「でもね、両親のためっていう気持ちもあるけど…本当わね、私……夕霧姐さんを裏切りたくないの」
姐として尊敬している夕霧。
第二の母親のような夕霧。
「ずっと私によくしてくれた姐さんが苦界にいるのに…私だけ足抜け(脱走)なんてできない…!」
蛍の切なる思いが水真馳の胸に響いた。