今昔狐物語
そう。
こういう子だからこそ、好きになったのだ。
他人に優しすぎる彼女の心が、とても愛しく思える。
「だから、私はここに残る。貴方とはいけないわ」
水真馳の明るい瞳に陰りが宿った。
遊女との恋愛など野暮。
わかってはいたが、どうにもできない。
――愛してしまったから
やるせない思い抱え、愛しい少女の瞳を見据える。
「そんな悲しそうな顔しないで。私、嬉しかったのよ。水真馳のこと……私も…愛してるから…」
「え…?」
急な告白に水真馳の顔が火照り出した。
白くてふさふさした尻尾が、気持ちに反応して左右に揺れ動く。
「ほ、本当ですか?女郎お得意の手練手管ではないのですねっ!?」
「失礼ね。私まだそんなに口説、得意じゃないわ」
蛍は寂しげな、切なげな眼差しで彼を見つめながら、口元に微笑を浮かべた。
「……愛してるから…だから……お願いがあるの」
「何ですか?」
彼女はすっと右手を上げた。
「私の小指を……噛み千切って」