今昔狐物語
水真馳は泣きそうな顔をして蛍に抱き着いた。
「好きです…」
「うん。私も…大好き…」
ギュッと抱きしめたまま、上げられた右手の小指を優しく舐める。
「ごめんね…辛いこと頼んで…」
囁かれた謝罪に、水真馳はきつくまぶたを閉じた。
「蛍…っ」
口を開け、獣の牙でそっと小指をなぞる。
その尖りにビクリと身を震わす彼女が、ひどく愛おしい。
「私の肩を噛んでいて下さい。相当、辛いでしょうから」
言われた通り、蛍は水真馳の肩に口をやった。
「いきます…」
小指の第一関節に牙が食い込む。
そして――
「んんんんんんっーーー!!!!!!!」
水真馳は第一関節から上を噛み千切った。