今昔狐物語

水真馳は泣きそうな顔をして蛍に抱き着いた。

「好きです…」

「うん。私も…大好き…」

ギュッと抱きしめたまま、上げられた右手の小指を優しく舐める。


「ごめんね…辛いこと頼んで…」


囁かれた謝罪に、水真馳はきつくまぶたを閉じた。

「蛍…っ」

口を開け、獣の牙でそっと小指をなぞる。

その尖りにビクリと身を震わす彼女が、ひどく愛おしい。

「私の肩を噛んでいて下さい。相当、辛いでしょうから」

言われた通り、蛍は水真馳の肩に口をやった。

「いきます…」


小指の第一関節に牙が食い込む。


そして――



「んんんんんんっーーー!!!!!!!」



水真馳は第一関節から上を噛み千切った。



 
< 164 / 277 >

この作品をシェア

pagetop