今昔狐物語

激痛だった。

必死で声は殺したものの、涙が止められない。

すぐさま水真馳が自分の着物を破り、包帯がわりにそれを巻く。

「蛍!意識はありますか!?蛍っ!」

「っ……み、ま…ち」

たいていの人間は気絶するが、驚いたことに蛍の精神はしっかりしていた。

彼女を気づかって一瞬で噛み切った水真馳の手際のよさが、それを成し得たのだろうか。

「終わりましたよ蛍!終わりました…!」

破いた着物の余りで、切れた小さな小指を大切そうに包む。

水真馳は腕の中でぐったりとする彼女を優しく床に横たえ、ひざ枕をしてやった。

「蛍の思い、確かに受け取りました。…ありがとうございます」

水真馳の言葉に反応し、苦痛に呻きながら笑みを作る様子が痛々しい。


「蛍…私のお願いも、きいて下さい」

「なっ…に…?」


紡がれた言葉は、夢のようだった。



「年季奉公が終わったら、お嫁に来て下さい」



 
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