今昔狐物語


ダンッ!



突然、床に押し倒された。

「え?」

鞠紗の視界に映るものは、天井と修平の顔のみ。

「鞠紗、お前馬鹿だろ。せっかく俺が優しくしてやろうと思ったのによ」

「え…?しゅーちゃん…なの?」

「だからさっきから言ってるだろ。俺はお前の夫だ。だから…」

すると、修平は鞠紗の頬を一撫でしてから、強引に口づけてきた。

「んっ…!?」

強引。

確かに強引だ。


(なんで…?強引だけど、違うの。自分勝手な欲の押し付けじゃ、ない…)


垣間見えた支配欲の中の優しさ。

重なった唇から零れる鞠紗の吐息は、普段なら苦痛の呻きだが、今は悩ましい喘ぎに変わっていた。



「…はぁ…はあっ」

しばらくの後、解放されて呼吸を整える。

鞠紗は逃げ場はないかと、ちらちら視線を動かした。

しかし、彼女の思考など彼にはお見通しのようだ。


「逃がさない」


宣言された瞬間、始まったまぐわい。


 
< 183 / 277 >

この作品をシェア

pagetop