今昔狐物語
翌日は鞠紗による夫への質問攻めが、朝から晩まで続いた。
「玖羅加よね?」
「違う」
「玖羅加でしょ?」
「違う」
昨夜から同じ質問と答えの繰り返し。
けれど鞠紗は諦めなかった。
畑仕事が終わり、二人で家へ帰る途中もしつこく同じ問いを繰り返す。
「玖羅…」
「違う!鞠紗には俺が狐に見えるのか!?」
苛立った様子の夫に鞠紗は自分の意見を披露した。
「だって、玖羅加はお狐様の子孫だっておじいちゃんが言ってたわ。なら他人に化けることだってできると思うの」
真剣に語る鞠紗を見ていた修平は、冷たく吐き捨てた。
「……馬鹿馬鹿しい」
そして、すたすたと家とは違う方向へ歩いていく。
「あ、どこ行くの?」
駆け寄ってくる鞠紗に彼はきつい眼差しを送った。
「鞠紗は先に戻ってろ。俺は野暮用があるから後から帰る。いいな」
「わ、わかった」
気圧されてしまった鞠紗は素直に一人で家路についた。