今昔狐物語


 翌日は鞠紗による夫への質問攻めが、朝から晩まで続いた。


「玖羅加よね?」

「違う」

「玖羅加でしょ?」

「違う」

昨夜から同じ質問と答えの繰り返し。

けれど鞠紗は諦めなかった。

畑仕事が終わり、二人で家へ帰る途中もしつこく同じ問いを繰り返す。


「玖羅…」

「違う!鞠紗には俺が狐に見えるのか!?」

苛立った様子の夫に鞠紗は自分の意見を披露した。

「だって、玖羅加はお狐様の子孫だっておじいちゃんが言ってたわ。なら他人に化けることだってできると思うの」

真剣に語る鞠紗を見ていた修平は、冷たく吐き捨てた。


「……馬鹿馬鹿しい」

そして、すたすたと家とは違う方向へ歩いていく。

「あ、どこ行くの?」

駆け寄ってくる鞠紗に彼はきつい眼差しを送った。

「鞠紗は先に戻ってろ。俺は野暮用があるから後から帰る。いいな」

「わ、わかった」


気圧されてしまった鞠紗は素直に一人で家路についた。



 
< 186 / 277 >

この作品をシェア

pagetop