モラトリアム

俺は横になっていたベッドの近くの机にあるハサミを取り出し、無表情で下腹部を刺した。

え?
彼女は、お腹に走る痛みと、混乱で顔の表情が定まらなかった。
なっ…何で…?敬太君…?

はぁ…はぁ…。
あ…あんたが、礼奈達を殺したんだろ?
さっきも…俺の友達を。
昨日、もう目を付けてたんだろ‼︎

何の事かわからないよ…。
敬太君……痛いよ…。

嘘付け‼︎
グヂッ。

嫌な音をたてながら、ハサミは彼女の腹部へ刺さる。

あぁっ…うっ…。

彼女は泣きながら、訴えかける。

ほ…本当に、何の事か…わからない…。

黙れ‼︎
ザクッ…ザクッ…ザクッ…。
ハサミを振り下ろし、胸から肩へ掛けて、テンポ良く刺して行く。

俺も殺そうとしたんだろ?
この殺人鬼め!
そうは行かないぞ!!
礼奈達みたいに俺はやられない!
敬太君…。
ふざけるな!!お前のせいで…お前のせいで…礼奈達は!
けい…。
俺が殺してやる!俺が……。

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