約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「総司?」
「その様子だと瑠花も山波も知ったみたいだね。
一くん、山南さんが居なくなった。
近藤さんと土方さんのところに顔を出してくるといいよ。
僕は山南さんの後を追いかけるよ」
そう言うと総司は騎乗する。
斎藤さんは花桜を連れて屯所の中に入っていく。
少しだけ、花桜……ごめんね。
「総司……行くの?」
馬に乗って、高くなった総司を見上げて呟く。
「あぁ、今から出掛けて来るよ。
近藤さんと土方さんには暫く帰ってくるなって言われたから、
数日は帰れないかなぁー」
そう言って総司は、空を見つめる。
そんな総司の顔色はやっぱり少し青白く見えて、
そんな顔色に労咳を発症してしまったのかと私は不安になる。
本当なら、総司に山南さんを追いかけに行ってほしくない。
「総司……絶対に自分を殺さないで。
酷いよ……鴨ちゃんも山南さんも、
総司にばっか辛いことを押し付ける。
総司だって苦しいのに……」
本音を吐き出しながら、
自然と涙が溢れだしてしまう。
そんな滴を総司は、馬から降りて
指先で拭うと静かに自らの唇を重ねて来た。
総司の暖かな唇の感触を噛みしめる。
ゆっくりとその温もりが離れた時、
総司は、真っ直ぐに見据えて私に告げた。
「有難う。
瑠花の気持ちは嬉しいです。
でも心配は無用です。
瑠花、僕は思うんですよ。
僕がその役目を担えるのは信頼の証だと思うんです。
僕を僕として認めてくれている。
だからこそ、その最期を託し思いを委ねられる。
そうやって僕を信じてくれた絆が僕を歩ませてくれる。
だからこそ、僕は裏切りたくないんですよ」
総司は自身の心を優しい声色で私に伝えながら
にっこりと微笑みかけた。
……絆……。
そうやって言い切られてしまったら、
私はもう、それ以上総司を引き留める言葉が
見つけられない。
信じあってるから、思いあってるから、
相手の望みを叶えてあげたい。
私や花桜や舞。
今はただの仲良し組の私たちも
何時かは、そんな時間が訪れるの?
「瑠花、行ってくるよ。
屯所と山波を頼んだよ。
山南さんは、山波のことも僕たちに託して行ったんだから」
そう告げると、総司は馬を駆って屯所を後にして行った。
町の中を馬の駆ける音。
総司の背中が見えなくなるまで私はただじっと見つめてた。