あなたの心理テスト(ホラー)
 本屋の中はエアコンがいい具合にきいていて、熱くなった努の体を冷やした。


店には努以外にも立ち読み目当ての客が5、6人いた。


―――――さて、何のジャンルにしよう?

 
努はもともと読書が好きな方だ。


ライトノベルからミステリー小説、ホラー小説まで基本、何でも読む。


だから本屋に行って面白そうな本があれば、ジャンルを問わず、つい買ってしまう。


―――――いいや。奥から見よう。


 努は本屋の奥の奥の奥の一番隅の本棚へと足を向かわせる。


奥の方は成人向けの物も多い。入口では見えなかった立ち読み客が見えてくる。


皆顔を少しばかりにやつかせながら、何とも間抜けな表情で読み漁っている。


中高年の男性ばかり。店はそれを狙っているのだろう。


 しかし、努はそんなものには興味がない。


高校生だから、周りの友達に誘われる機会もあった。


―――――「これ読んでみろよ、面白いぜ?」


そう言われても読まなかった。興味が初めからないのだ。


 胸の谷間を覗かせ、誘うような表情をした女性の表紙が努を誘う。


キュ キュ キュ


スニーカーの音が静かに鳴り響く。


―――――くだらない。


 努は誘いに乗らず、無視する。


 ここの本屋は意外に広く、なかなか奥までたどり着かない。


 また、さっきとは違う女性の表紙が努に誘いかけるように厭らしいポーズをとっている。


―――――くだらなすぎる。


再び無視する。


 そして歩くこと約1分。


店の一番奥の本棚にたどり着いた。


成人向けの雑誌や小説はなく、安心して物色できそうだ。


努の160センチある身長よりずっと高い本棚が、努を見下している。
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