あなたの心理テスト(ホラー)
 「はあ、はあ、はあ…」


 何度跳んだだろう。何度心の中で叫んだだろう。


努は疲れ果てた。息は上がり、顔は火照っている。


もうかれこれ30回は飛んだはずだ。


―――――本のためにここまで必死になる馬鹿は、世界広しと言えども俺くらいだな。


 そんなことを考えながら、もう努は諦めようかとも思った。


―――――こんなに頑張っても取れないなら、本が諦めろって言ってるようなもんだよな。


 努は店員を呼ぼうか、とも思った。


だけどわざわざ本1冊のために梯子やら何やら持ってこさせるのもちょっと…。


と思い、やめた。


―――――さ、本のことなんか忘れよう。


 そう思ってもう帰ろうと努は回れ右をしようとした。


しようとしたその瞬間に…


ぽん。


「うわあああ!?」


 肩を誰かにたたかれた。


 再び努の額には脂汗が浮かぶ。もうエアコンなど意味がない。


 恐る恐る努は後ろに振り返った。


―――――誰、だ、よ…!?


「!」


 そこにいたのは努がよく知る人物だった。


「蘭かよ…」


「蘭で悪かったわね」


 店の蛍光灯に反射して蘭の眼鏡がきらりと光る。


「それより…こんなところで何をしていたの?店の奥深くにまで来て」


 人差し指で眼鏡をくいっと持ち上げて蘭は言った。


「別に…話すほどのことじゃないよ」


「いいじゃないの。隠し通すようなことなの?」


 蘭が努の目をじーっと見ている。


 ベテランの刑事に職務質問されているようだ、と努は思った。


―――――まあいいか。隠すようなことじゃないよな。


「いや、実は―――――」


 努は蘭に一部始終を話した。


 もちろん、努が本1冊のためにピョンピョン飛び跳ねていたことは、


うっかり言わないように気を付けて。


馬鹿馬鹿しい、なんて言われたら恥ずかしいからだろう。
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