あなたの心理テスト(ホラー)
 蘭を家まで送った後、努は自分の家へと帰った。


 気が付けば携帯電話の時計は5時39分をさしている。


 蘭を送っていくとき、努と蘭はお互い、何も話さなかった。話そうとしなかった。


自然にできていた気まずい空気が、そうさせたのだろう。


 重い鞄を背負って2階にある努の部屋へと向かう。


 母はお帰り、とだけ言ってそれ以上何も言わなかった。


 今の努の頭の中にはあの本のことしかなかった。


―――――もう無いのだから、しょうがない。


 それは百も承知していた。


 しかし、やはり諦めきれない。


そんなことを考えながら部屋へとつながるドアを開ける。


がちゃ。


 相変わらず殺風景な部屋だな、と努は思った。


 白いベッドに木でできた本棚、ポスターなどどこにあろう。


机の上には筆箱ぐらいしか置かれていない。良く言えば、整頓されている。


「ハア…」


 ため息をついて、


じじじじじじじ…。


カバンのチャックを開けていく。


―――――明日の授業の準備をしなければ。


 努は本のことなど忘れてしまおうと、他のことで気を紛らわせた。


 別に明日の授業なんてどうだっていい。


 そして鞄のチャックは全開となった…その時…!


「!?…は?」


 努は自分の目を疑った。何度も目を擦った。


瞬き、擦る、瞬き、擦る…その繰り返し。


 しかし、目の前に映し出された光景は形を変えなかった。


「嘘…だ、ろ?」


 努の全身が震えてくる。


もうさすがに汗は出てこなかったが、今日一番驚いたことはこれに違いない。


いや、今まで生きてきた中で一番驚いたことだろう。


―――――なぜ?なぜここにある?


 今起きていることは本当かと努は自分の頬をつねった。


「いってぇ…」


本当のことだ。


 信じられないと思う気持ちと嬉しさが込み上げてきて気持ちが高ぶってくる。


「はは…は、はは…!」


 笑いは止まらない。


 努のカバンに入っていたもの…それは努の『諦めたもの』。


諦めたものとは…言うまでもない。


 あの本である。
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