あなたの心理テスト(ホラー)
 「この本はねぇ~…」


 ごくん。


その場にいるくるみ以外の全員が息をのんだ。


あの興味のなかったヨシまでもが。


たかが本。なのに、内容が気になって仕方がなかった。


普通の本ならそこまで気にならない。素通りしてもいいくらいだ。


でもこの本だけ。この本だけは…。


異様なオーラが努たちの目を引き付けているのだろうか。


内容を知らなければ後悔する、そう感じた。


実際、誰もオーラなど感じていない。魅力など微塵も。


でも気が付けば、視線はいつも本のもとへとあった。


一体なんだというのだろう。


―――――面白い本だったら貸してもらって読みたい。


―――――んだよ、この本…。なんかおかしい気がするんだが…。


―――――なんでなかなか言おうとしなかったんだ?まさか、18禁とか…!?


―――――著者は誰かしら?有名な先生だったら期待するのだけど…。


 努、ヨシ、海斗、蘭。


それぞれの思いが交差して、教室には不思議な空間ができていた。


 そして持ち主のくるみ…。


この本はねぇ~…とまで言ったのだから、


すぐ答えを教えてくれるだろうと4人は皆そう思っていた。


しかし、いつまでたっても口を開かない。


長い沈黙が続く。


10秒、20秒、30秒、40秒…まだ言わない。


今更になって言いたくないなとでも思っているのだろうか。


そして教室の時計の秒針がちょうど一周した瞬間。


 カッと目を見開いたくるみは、


ばたっ。


その場に、倒れこんでしまった。
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