あなたの心理テスト(ホラー)
 「「「「くるみ!?」」」」


 くるみの持っていた本はそのまま床に落ち、しおりが抜けていた。


しかし、今はそんなことはどうだっていい。


くるみが最優先だ。倒れてしまったのだから。


本なんか二の次だ。


「何だ!?」


 教室にいた五十嵐が心配して走ってきた。


「五十嵐先生、ちょっと原因は分からないんですが急にくるみが倒れてしまったんです」


 冷静に状況を伝える蘭。眼鏡の奥の瞳がきらりと光る。


「そうか。別に異常はなかったんだな?」


「…ハイ」


―――――異常がなかった、と言えば嘘になるけど言ったところで信じてもらえないわ。


   何も話さないと思ったら急に眼を見開いて倒れただなんて…。


 倒れているくるみ以外のメンバーはくるみの様子がおかしかったことを知っている。


しかし、言うわけにはいかない。


いや、正確に言えば『言えなかった』。


なぜかは分からない。言おうとも思った。努も、海斗も、ヨシも……蘭も。


もちろん信じてもらえない、という理由もあった。


しかし、言おうと思うと口が勝手に閉じてしまうのだ。


開けようとしても、開かない。


まるで口だけが金縛りにかかったようだ。


だから信じてもらえる、もらえない以前に言えないのだ。


「まあいい。もう状況はだいたいわかった。顔色は悪くないし、保健室に連れて行こう」


 五十嵐はそう言ってくるみをひょいと抱きかかえた。


―――――あ、羨ましい…。


努は少しそう思った。


まあ緊急事態なのだからそんなことを考えている暇などないのだが。


「おし、お前ら、着いてくるよな?」


そう言って教室の扉の前に立った五十嵐は努たちに手招きをした。


もちろん着いていくに決まっている。


努たちは鞄を持って五十嵐の後を追った。


 教室から出ていくとき、努は感じていた。


―――――大変なことが起こる気がする…。


しかしその時は、


―――――まあいいや。気のせいだろう。くるみが倒れたのも偶然だ。


自分で自分を誤魔化した。
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