紅茶遊戯
思いの丈をぶつけるように、緒方さんは私の目を真っ直ぐに強く見る。
私は行き場を失った手をゆっくりと下ろした。


「そ、そんな…、」
「寛永さんだって、昨日小林さんを辞めさせることに賛成してくれたじゃないですか」
「私が?」


呟き、私は目を泳がせながら頭を回転させる。


『ていうか私たち、誤解があったかもしれないけどそんな問題を起こしたり、返却作業しかまともにできない人とこれ以上一緒に仕事するのは、ちょっと』


確かに、うん、だか、そうだよね、だったかもしれない。
確かに私は、同意したかもしれない。
けどそれは、矢田さんが可哀相だったからで。
小林を辞めさせることに関して頷いた訳じゃないのに。


「あの、緒方さん、」


そう伝えたくて顔を上げれば、彼女の目はまん丸に見開かれていた。
目線の先は、正面に立つ私なんかじゃない。焦点は、もっと後ろの方に合わさっているようだった。

まるでなにか、本来見えないはずのなにかが、見えてしまっているかのように。
緒方さんの表情は固く強張ってゆく。


「こ、小林さん……」


彼女の焦燥に満ちた震えた声に、心臓が飛び出すくらい驚く。
ゆっくりとスローモーションで振り向いた。


「、小林くん…」


掠れた私の声を聞き、隣のレジを開けようとしていた相手は、心ばかり眉を下げ頼りなく笑ったようだった。
ほんの少し。
顔が、長めの前髪に隠されはっきりとは見えないから、私がただ、きっとこんな顔をしているだろうと、思っただけかもしれなかった。
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