紅茶遊戯
小林もそうだったのが、私の肌への愛撫を一旦中断すると、着ているネルシャツを煩わしそうに脱ぎ、中のカットソーも脱ぎ捨てた。


「…っん」


首筋に落とされたキスと、小林の手の動きについ声が漏れる。
恥ずかしくて顔を背けても、この距離だもの、相手の吸い寄せるような漆黒の瞳は私のすべてを見逃そうとはしてくれなくて。
観察するように、射抜くように、私の全身の動きすべてを見下ろしている。

腕を伸ばし、小林の長い前髪を軽く掻き分けた。


「…なに?」


堪えるような声も。
小林のこんな顔も、初めて知った。


「な、なんか…っ、慣れてる?」
「寛永さんはまさか、初めて?」
「違うけどその、ひ、久しぶりだから…」


痛い。
勝手に顔が歪む。

だけどそれも、最初のうちだけ。
快楽を思い出した体は、緩急のある動きにいちいち反応する。

小林は動きを止め、私の頬にやんわりと触れた。


「我慢しないで足、伸ばして」


小林が、あの“バイトの小林くん”が、こういうこと言うのってなんだか異常に興奮する。

指示通りに足を伸ばせば、比類のない快楽と、初めて見る小林の優しくて切なげな眼差しに、体が溶けそうになる。

温かい。
たぶん私は今、自分で自分の為に淹れる紅茶なんかより、もっともっと何倍も、温かい。

けれどもこのぬくもりに、ずっと浸ってはいられない。


『わかってます、俺バイト辞めるってさっき店長に話してきました』


小林の顔を見上げて、口の内側を歯で強く噛み締めた。
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