紅茶遊戯
※ ※ ※

店の前に求人広告を貼ったら、すぐに何件か問い合わせがあった。
付近にいくつか大学があるから、希望者は溢れている。
けど、採用するか否かを決めるのは店長だ。私はただ、年下の若い、音楽や映画がそれなりに好きそうな学生に、仕事の内容を教えればいいだけなのだ。

ただ淡々と、それなりに真面目に、与えられた役割をこなすだけ。
それだけで毎日は、流水かの如く停滞もせず、自然に過ぎ去ってゆく。

私の気持ちなど置き去りにして。


「はあー、やっと落ち着きましたね。セールってほんと、半端ないっすね!」


緒方さんは言いながら、両手をぶらぶらと振る仕草をした。
レジを打ったりだの、DVDを袋に入れたりだの一連の作業に同じように腱鞘炎になるんじゃねえか、って思ってた私は、ただ薄い笑顔で頷いた。


「緒方さん、今のうちに休憩入って?後からまた混む時間帯がくるだろうし」


私の提案に、彼女は「はぁい」などと気のない返事をしながらも、カウンターの下で足りない備品のチェックをしている。

小林が辞めてから、三週間。
新しいバイトはまだ採用の運びとならないまま、怒涛のセール期間に突入してしまった。

緒方さんもずっと連勤で、辛いだろう。
けれど彼女は備品の補充をし、レジ前にお客さんが数名でも列を作ろうもんなら、またレジに向かう。
私は、一応は社員として悪いとは思いながらも、彼女の責任感に甘えることしかできなかった。

それに反して、すんなりと辞めることを店長に認められた小林は。
三週間、会っていない。
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