紅茶遊戯
「俺寛永さんの、気持ちを聞くのが怖くて。ほら俺、かなり、一方的だったから…」


その先を言いづらそうにして、小林が俯く。

ひゅっ、と空気を吸い込むような音がして隣を見たら、緒方さんが尋常じゃないくらい顔全体をピンク色に染めて、口元を手で覆っていた。


「こうして客として、店に来るのはいいよね?」


そんなギャラリーなどには構わずに、小林が続ける。


「それから、寛永さんの紅茶を飲みに行くのも」


にっこりと、一見邪気などまとわないような屈託のない笑顔で小林は私を見る。

けど私は、知っている。
自分であっさり白状したんじゃない、下心ってやつを。


「……、」


私は無言で、頷いた。
体が勝手に、受け入れた。
それだけで良かった。

それから小林は、私がマニュアル通りに聞く前に、財布の中からメンバーズカードを取り出した。

ピ、とバーコードをスキャンする。

この映画を、もしかしたらもう一度、今度は一人じゃなくて、寒さなど微塵も感じずに、幸運にも唯一のぬくもりが病みつきになる人と観られるのかもしれない、と思ったら、抱いたことのない感情で胸が一杯になった。

それだけで私は、自分でも正に引くくらい気持ちが高ぶり過ぎて幸せだったし、周りなんか見えないほどに小林にもう、満たされていた。
紅茶みたいなセピア色に染まった私の世界が明るく色付いたように思えてならなかった。



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