幻想
アルバムの後半はロックを基調とし、知り合いなのか、はたまたスタジオミュージシャンなのか詳細はわからないが、他のパート楽器の演奏は世に出ているアーティストより抜きんでている。そのテクニック揃いも相まって、歌い人である�フウ�の情熱な歌声、それと逆行する詞が、まずはインディーズチャートを賑わし、有線市場を席巻し、メジャーデビューまで辿り着いた。メディアへの出演は一切なし。だが、一度だけ音楽雑誌、「ロックロック」の表紙を飾り、顔が晒された。清潔感溢れる流麗な長髪に、前髪から覗かせる、鋭く世を切り裂くような目。筆で書いたような薄い唇は冷たい詞に合致している。
雑誌の中でフウはインタビュアーに、『アーティストであるフウとして、またはウイングとして、音楽とはなんですか?」問われた。
「恋です」
質問に関する彼の答えは簡潔だった。そこには一切の無駄がなく、文面から強い意志のようなもが感じられた。雷が地上に降り注ごうが、全く砕けやしない、大岩のように。
「意外ですね」とインタビュアー。
「そんなことはないです。人間は恋をし、音楽を聴く。恋と音楽の共通点ってなんだかわかりますか?」
歌詞とは裏腹に丁寧な口調。もしかしたら雑誌の編集の際に、文面を直しているのかもしれない。今では編集作業は雑誌のみならず音楽でも簡単にできる。
「わかりかねます」
「繋がり、繋げる」
そこでインタビュアーは終わっていた。本日はありがとうございました、や、これからも音楽活動頑張ってください、というインタビュアーの儀礼的文面すらない。
繋がり、繋げる。
その言葉の羅列だけでインタビューは終わっていた。結局、フウとは何者なのか、という正体めいたものは全く明かされないまま、謎は深まり、その謎が拍車にかかり、アルバムは飛びように売れた。そして、世間での熱狂を嘲笑うかのように、ウイングは風にのって羽ばたき忽然と音楽シーンならびに、市場から消えた。
「フウって結講タイプなんだよね」
ある日、ビールを飲み、ほろ酔い気分で青葉に語りかけた。青葉はスタジオでレコーディングした曲の編集作業に入っている。次回のライブで演奏するためだ。が、その作業する手が止まった。
「そういうのはあまり聞きたくない」
雑誌の中でフウはインタビュアーに、『アーティストであるフウとして、またはウイングとして、音楽とはなんですか?」問われた。
「恋です」
質問に関する彼の答えは簡潔だった。そこには一切の無駄がなく、文面から強い意志のようなもが感じられた。雷が地上に降り注ごうが、全く砕けやしない、大岩のように。
「意外ですね」とインタビュアー。
「そんなことはないです。人間は恋をし、音楽を聴く。恋と音楽の共通点ってなんだかわかりますか?」
歌詞とは裏腹に丁寧な口調。もしかしたら雑誌の編集の際に、文面を直しているのかもしれない。今では編集作業は雑誌のみならず音楽でも簡単にできる。
「わかりかねます」
「繋がり、繋げる」
そこでインタビュアーは終わっていた。本日はありがとうございました、や、これからも音楽活動頑張ってください、というインタビュアーの儀礼的文面すらない。
繋がり、繋げる。
その言葉の羅列だけでインタビューは終わっていた。結局、フウとは何者なのか、という正体めいたものは全く明かされないまま、謎は深まり、その謎が拍車にかかり、アルバムは飛びように売れた。そして、世間での熱狂を嘲笑うかのように、ウイングは風にのって羽ばたき忽然と音楽シーンならびに、市場から消えた。
「フウって結講タイプなんだよね」
ある日、ビールを飲み、ほろ酔い気分で青葉に語りかけた。青葉はスタジオでレコーディングした曲の編集作業に入っている。次回のライブで演奏するためだ。が、その作業する手が止まった。
「そういうのはあまり聞きたくない」