Tea Time

「台風で臨時閉店した二年前のこと、覚えてますか?」


「え?」


俺は、記憶の糸をたぐったが、何のことだかまるで思い出せなかった。


「近くの川が増水するかもしれないって話になって、帰れなくなったらとか、みんな悲壮な気持ちでいた時、古川さんが、−ゴムボート買いにいきましょうか−って、言ったんです」


「そうでしたか?」


「大爆笑がおこって、深刻な雰囲気が和らいだでしょう?」


「よく覚えてません」


彼女がそんなことを覚えていてくれたのが、うれしかった。

「ああいう時ほど、ユーモアって大切よね。すごいなあって思ったんです」


彼女の笑顔につられて、思わず微笑んでいた。
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