略奪ウエディング
――「あ、そうきたか」
「私のライフはまだある。悠馬が先に終わるわね」
「え、そんなはずないよ」
「あ、来た。やっ!」
「ああ~、やめろって」
戦闘モノのゲームを二人で並んで寝転がり笑いながら楽しむ。
温かいコーヒーの湯気と、ふかふかのクッション。
隣には子供のように笑う彼の顔。
「梨乃、やったことないなんて嘘だろ。強すぎる」
「運も勝負のうち」
そう。私は強運だ。
こんなに幸せを感じることができるのだから。
「ヤバいよ、勝てない」
「弱気な悠馬を会社で見たことがなかった。なんだか新鮮」
「本当はいつも弱気だよ。実はアカマメに怒られるたびにへこんでた」
「それは嘘ね。平気そうな顔をしてた。楽しそうに」
「ばれたか」
ゲームオーバーになり寝転んだまま彼に身体をくっつける。
彼はそんな私の頭をそっと自分の腕に乗せた。
見つめ合いながら黙り込む。
黙っていても、分かる。
きっと同じことを思っているから。
――あなたを愛している。心の奥の、深いところから湧き上がってくるようなそんな愛に揺られ、めまいを起こしそうになる。
「悠馬、…何て言ったらいいのか分からない。他に言葉が思いつかないの」
「…何?」
「愛してる」
私が言うとその顔はほろりと優しく緩んだ。
「俺も。…梨乃に、欠片も残さず根こそぎ奪われてしまってるよ」
「…何を?」
「俺の気持ち。自分の意思すら通らなくなるほどに。…君次第なんだ」
そんな風に囁かれたら私にも意志なんてなくなる。すべてがあなた次第になってしまう。