略奪ウエディング
今夜もあなたを抱きしめて眠ろう。
その吐息が私の肌にかかるほどの近さで。
甘い囁きを聞きながら、あなたに包まれていたい。そう思いながら目を閉じ、抱かれる腕の体温を感じる。

「明日、もう一度茜に会うよ」

彼の言葉に目を開いた。

「信じて。今はまだ、…これしか言えない。会っても…いいか?」

私は笑顔で言う。

「いいよ。…信じてる」

彼は安心したように微笑んだ。
もう、疑ったりしない。自信なんてあるわけじゃないけれど、信じることも愛だと思うの。
恋に不器用な私をここまで成長させてくれた悠馬が、本当に大切なの。

「その代わり、…私のお願いを聞いてくれる?」

「ん?」

「今夜は…私を抱きしめていて?朝まで…離さないで」

彼は笑顔のままで私の耳にそっと囁いた。

「言われなくても。離したくないよ。…君次第だって…言っただろ」

彼の囁きに酔って、蕩ける瞬間が好き。
髪を撫でてくれる指の感触が好き。
唇がそっと触れて、胸が締めつけられる感覚が好き。
私を見つめる濡れた瞳が好き。

彼への愛は、『好き』がいっぱい詰まっている。

あなたにそれを全て差し出して、その心に埋めてほしい。

私は彼を見つめながら、そんな妄想を頭に描いていた。



< 144 / 164 >

この作品をシェア

pagetop