略奪ウエディング


「…ごめ…なさ…」

俺の声の大きさに驚いたのか、再び彼女の目に涙が溜まっていく。

あ。ヤバい…。
俺は一体何をやっているんだ…。

「あー…、もう…」
自分に腹が立つ。意味もなく梨乃を泣かせて弁解して。いつもの俺ならばもっとうまくやれているはずなのに…なぜ今日はこんなにもから回っているんだろう。

そのまま、シャワーを浴びに行くのをやめて再びベットへと潜り込む。

そっと腕を伸ばし、寝ながらそんな俺を見ている梨乃を優しく抱きしめながら目を閉じる。
今日は土曜日だからゆっくりと梨乃と過ごせばいい。彼女に寂しい思いをさせた分一緒にいてあげたい。そう思った後で一緒にいたいのは本当は自分なのだと気付き一人笑う。
そんな俺の胸の中で彼女はじっとしている。

「大きな声を出してごめん…。東条の話はもうしないで。…俺が梨乃のそばにいるから。もう彼は関係ないから」
不安を打ち消すように言う。彼のことを考えてほしくはない。俺だけを見て。

彼女は俺の胸に顔を埋めたまま「……はい」と小さな声で答えた。

裸のままでこうして抱き合っていると昨夜の事を思い出さずにはいられない。

十分すぎるほどに愛し合ったはずなのに改めてまたその全てが欲しくなる。こうなることが予想できたからこそ以前は梨乃を拒絶したのかも知れない。

「……梨乃」

「…はい…?」

「ヤバいんだけど…。俺…我慢できない」

「……えっ……?」

俺は彼女の身体をクルッと回し上から梨乃を見下ろすと、そのままもう一度言った。

「抱きたい。もう一度…欲しい。…どうかしてるのかな…。限りがない」

彼女の記憶から東条を消してしまいたい。そうならない限り、君を求め続けるのだろうか。
何もかもを忘れ去るかのように俺に溺れてほしい。

「…ううん。…私もです。もっと…知りたい…」

ふわりと恥ずかしそうに笑う梨乃が、本当に可愛くて、胸が切なくなる。
東条は彼女の何を見ていたのだろう。俺ならば何があっても彼女を人に渡したりはしない。

そう思いながら彼女の肌にそっと指を滑らせて撫でていく。

彼女は…もう俺のものだ。誰にも触れさせない。
俺が、これから一生をかけて守っていく。

強くそう心に誓いながら昨夜とは違い、優しく彼女に触れていく。奪うだけではなく、優しく包み込むように。


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