略奪ウエディング


「うっそ。…趣味、変わったのね。派手な女しか連れてなかったくせに。可愛い子じゃない。大丈夫なの?結婚なんてして。悠馬は飽き性なのよ」

「…え、あの」

茜が梨乃を凝視しながら言うのに対し、梨乃は困った顔をしている。

「茜、やめろよ」

俺が梨乃を隠すように前に出ると、茜はニヤニヤと笑い出した。

「いやだ、悠馬、焦ってる。おもしろい」

「茜」

ダメだ。茜と梨乃ではタイプが違いすぎる。しかし相変わらず思ったことを言い過ぎだよ。彼女は悪い人ではないのだが誤解を受けやすい。

「じゃあまたな。頑張ってな」

俺は梨乃の手を引きその場を離れようとした。

「番号、変わってないから。よかったら電話してね」

「ああ」

梨乃は俺に手を引かれて大人しく付いて来ていた。
茜と離れて、ようやく彼女に話しかける。

「ごめん。驚かせて」

「…いえ…」

先ほどは転びそうなほどにはしゃいでいたのに、彼女は元気を無くしていた。

「茜とはこっちに来る前に終わってる。もう関係ないよ」

「はい。分かっています」

口ではそう言いながらも、梨乃は俺と目を合わせなかった。

「じゃあ俺を見て」

立ち止まって彼女の前に出る。
正面から向き合い、その顔を覗き込んだ。

ゆっくりと顔を上げて梨乃は俺を見た。


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