略奪ウエディング
その額に、自分の額をくっつける。
お互いの目が、至近距離で合わさった。
「梨乃。…思っていることを話して」
「…何も…」
「嘘だ。全部言って?」
俺が言うと、彼女は額を外し、俺の身体にギュッとしがみついてきた。
「梨乃?」
「…言います。怒らないで下さい」
顔を俺の胸に押し付け、隠したまま彼女が言う。
「うん?どうぞ」
「綺麗な人でした。明るくて、私とは違いました」
「うん」
「課長は昔の彼女だと言いました。終わっていると。でも、嫉妬しました」
「うん」
「趣味が変わったと言われて、自信がなくなりました」
「うん」
そう。全部伝えて。君が何を考えているか。俺が悪ければ直すから。
「でも、…課長が、好きです」
「うん」
俺は彼女の頭に手を乗せてそっと俺から離し、そのまま顔を上に向けさせた。
その目を見ると、やっぱり彼女は泣いていた。
「私でいいのかなって不安になりました。でも、諦めるなんてできません。…好きで。課長が、好きで…、失いたくはないです…」