略奪ウエディング
ぼんやりする私を見ながらスミレが言う。
「…ダメよ、彼は。あんたの手に負える相手じゃないわ」
「…え?」
私は課長から目を離してスミレを見た。
「モテるし、相手は選び放題。飽きられて乗り換えられたら立ち直れないでしょ」
「や、やだ。そんな、私は」
「バレバレよ。惚れっぽいんだから。だ・め・よ。彼は観賞用よ」
短大時代からの友人であるスミレには全てがお見通しのようだ。
実際、私が恋人に捨てられる度に彼女には慰められ助けられてきた。
「…素敵だなって、少し思っただけよ。分かっているから」
「そう?ならいいけど」
そんな私たちに他の同僚が話しかけてくる。
「ねえねえ、企画課の前原さん、受付の香織と別れたんだって」
「マジ!?飲み会、飲み会!前原さんの都合聞いて!」
スミレはすでに別の男性の話題に入っている。
私もそんな風にできたなら。
そう思いながら私は課長の歩いて行った方向を見ていた。