婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
……というわけで、現在。
「先にハッキリと申し上げておきます。
私(わたくし)は、貴方となれ合う気など毛頭ありませんわ!!」
唖然としている敬太様に嫌われるべく、私は彼に言い放った。
――漫画の中の敬太様は、たしか自分に歯向かう人間が大嫌いだったハズ。
だから、こうして反抗的な態度をとっておけば!
……なんて考えながら敬太様に背を向けたその瞬間。
「……へぇ?」
そんな低い呟きと共に、強い力で肩を掴まれた。
半ば無理やり振り向かされた私の視界に入ったのは、敬太様の綺麗な顔。
――次の瞬間、私は敬太様に口づけられていた。