青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「ぜんぶ、知ってる。トモくんが麗奈ちゃんを好きだったこと、……私はぜんぶ、知ってる」
震える、声と。
彼の、表情が。
空をより、鮮やかにしていく。
「トモくんが、ずっと麗奈ちゃんを見てたのも、一生懸命話しかけてたのも、…知ってる。いちばん近くで、見てきたんだから」
…ずっと、見ていた。
彼女を見つめる、その背中を。
男の子はみんな、私を見ていたから。
他の視線とは違う、自分の隣に向けられていた視線に、私はすぐに気がついた。
周りの女の子とは違って、一筋縄ではいかない麗奈ちゃんとの会話に、この人がすごく苦労していたこと。
遠くから、彼が密かに私の隣を見ていたこと。
…その視界にはいつも、彼女しか映っていなかったこと。
私は彼女のいちばん近くで、ぜんぶ見てきたんだ。
「……利乃、ちゃん」
「だから私にまで、笑わなくていいの。トモくんは笑うのが上手だから、みんな気づかないんだよ」
唇を噛んで、空の映る彼の瞳を見つめる。
彼が彼女に恋をした一年間、私が見ていたもの、感じていたこと。
たくさんたくさんあるけれど、言えるはずがなかった。
嘘ばかりついている私が、嘘の笑顔で誤魔化す彼に、何かを伝えられるはず、なかった。