青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
言ったって、利乃は困るだけだ。
『そんなことできないよ』と、気遣うための笑みを浮かべるだけだ。
………俺は、なんにもできない。
『……泣けなくても、それでも。呼んでよ。そばにいるから』
利乃は『うん』と震えた声をして、俺の背中に手を回した。
そして、苦しいくらいに俺を抱きしめる。
……まるで、俺がここにいることを、確かめるようだった。
それから五年生に進級して、夏休み。
八月のはじめの、夏祭りの日だった。
母親から、『家で留守番をしててね』と言われていた利乃を誘って、夏祭りに行った。
俺が母親から、『楽しんでおいで』と渡された少ないお金で、食べ物を買う。
花火の時間になって、アナウンスが流れる。
会場にいる人々の期待を一身に受けて、ひとつ目の花火が打ち上げられたときだった。
隣にいる利乃の瞳が、大きく見開かれる。
彼女は、花火を見上げてはいなくて。
『…利乃、あっちの方がもっとよく見えるよ。……利乃?』
利乃は俺の言葉に反応することなく、ただただ呆然として人混みの中を見つめていた。
俺も、その視線を追う。
そこに、いたのは。
……利乃の母親と、…仲良さげに話す、知らない、男。
『……利乃!』
喧騒の中、腹の底から名前を呼んだ。
彼女の手をぐいっと引っ張り、その場から離れる。