青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「我慢しなきゃいけないんだよ!だってせっかくお母さんが、良い人見つけたのに。ここで私が邪魔したら…」

「それじゃ、あの頃と同じだよ!そうやっておばさんのこと優先してさぁ、また利乃、中学のときみたいに……」

慎也のその言葉は、最後まで言えなかった。

利乃がハッとして、口を大きく開いて。


「慎ちゃん!!」


…遮った、から。

利乃のその声は教室中に響き渡って、慎也は口を閉じた。

クラスのみんなが、こっちを見てる。

利乃は慎也を見つめて、ぐっと唇を噛んだ。

そして、ガタッと席を立つ。


「……ごめん、なさい」


…今まであたしが聞いたことのない、弱々しくて、か細い声だった。

それだけ言うと、利乃は教室を出て行く。

慎也も目を伏せて、あたしとトモに「ごめん」と言った。


「…頭、冷やしてくる」


そして、利乃が出て行った反対の扉から、教室を出て行った。

「……………」

しん、と教室が静まり返る。

…ただでさえ、その整った容姿でクラスに一目置かれてる、仲の良いふたりが。

こんなふうに言い合いをしていたら、誰だって驚く。



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