青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
なにも言わず、慎也の出て行ったほうを見つめているトモに、「ねえ」と声をかけた。
「……あたし達、ふたりのこと、なんにも知らないんだね」
「………うん」
トモは、いつも明るい瞳を陰らせて、目を伏せる。
担任が入ってきて、あたし達は席へついた。
……『あの頃』と、慎也は言っていた。
あたしの知らない、ふたりだけの時間。
彼は何を見て、何を感じて、彼女を好きだと思ったんだろう。
ふたりの間に、一体何があったんだろう。
あたしは何も知らないし、想像もつかない。
ただ、あんなにもふたりに辛い表情をさせるような、何かが。
幼いふたりに降りかかったんだろうということは、わかった。
…言ってくれても、いいのに。
ふたりとも、『ごめん』って謝ってきたけど。
謝る必要なんか、ないんだよ。
家庭のことではあるけど、愚痴るのは悪いことじゃない。
利乃はいつも笑ってるんだから、たまにはただ『きつい』って言ったって、いいんだよ。
慎也も、利乃のために言ってるんだ。
利乃の母親の再婚に対して、ふたりが真剣に考えてること、わかるから。
……『ごめん』なんて、おかしいのに。