青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


そう言えなかった、自分が悔しい。

どうしよう、という利乃に、あたしは何も言ってあげられなかった。

だって、何も知らない。

あたしは利乃のことも、慎也のことも、ふたりの気持ちも。

友達なのに、なんにも知らないから。

……何も、してあげられない。


それが、すごく悔しかったんだ。






放課後。

利乃は「ごめんね、ひとりで帰らせて」と言って、先に帰って行った。

あたしは帰る気にもなれなくて、屋上へ向かう。

…落ち着かなきゃ、いけないから。

空を見ていたら、冷静に考えられると思うから。


キィ、と屋上の扉を開ける。

目に飛び込んできたのは、快晴の青い空と、柵の手すりのところで空を眺める、見慣れた背中だった。



「トモ」

名前を呼ぶと、首だけ動かして振り返ってくる。

あたしを見て、ハハッと笑った。


「やっぱ気が合うね、麗奈ちゃん」


……ホントにね。

トモの笑顔を見ていると、なんだか気が楽になってくる。



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