青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
そう言えなかった、自分が悔しい。
どうしよう、という利乃に、あたしは何も言ってあげられなかった。
だって、何も知らない。
あたしは利乃のことも、慎也のことも、ふたりの気持ちも。
友達なのに、なんにも知らないから。
……何も、してあげられない。
それが、すごく悔しかったんだ。
*
放課後。
利乃は「ごめんね、ひとりで帰らせて」と言って、先に帰って行った。
あたしは帰る気にもなれなくて、屋上へ向かう。
…落ち着かなきゃ、いけないから。
空を見ていたら、冷静に考えられると思うから。
キィ、と屋上の扉を開ける。
目に飛び込んできたのは、快晴の青い空と、柵の手すりのところで空を眺める、見慣れた背中だった。
「トモ」
名前を呼ぶと、首だけ動かして振り返ってくる。
あたしを見て、ハハッと笑った。
「やっぱ気が合うね、麗奈ちゃん」
……ホントにね。
トモの笑顔を見ていると、なんだか気が楽になってくる。