神様なんて信じないっ!~イケメンと妖怪、召喚しちゃいました~
雷牙はそう言って、ついでに筆や洗うべきものを持ち、水道の方へと歩いていく。
あたしはその間に、失敗作の半紙で墨を吸い取ろうと、床にかがんだ。
「……それじゃ足りないだろ?」
静かな声音に、はっと顔を上げる。
すると槙原くんが、自分の半紙を持って、あたしの前にかがむ。
「新聞もあった方がいいかな」
彼は床の墨に染まる半紙を見ながら、つぶやく。
「あ……えっと……」
普通に答えればいいのに、言葉がうまく出てこない。
そんなあたしの目を視線でとらえた槙原くんは、真剣な顔をしていた。
「この前のことなら……忘れたから」
わざわざそう言ってくれるってことは、忘れてないんじゃない。
黙ってしまうあたしを、彼は相変わらずまっすぐに見つめる。
「それに……嘘じゃないから」
「えっ?」
「もしかして忘れた?
僕が神崎さんと、親しくなりたいって言ったこと」
どきりと、心臓がはねる。