神様なんて信じないっ!~イケメンと妖怪、召喚しちゃいました~


「そうだな」

「お前たまにはマトモじゃん!」


二人は火花を散らしたまま、ジャンケンをはじめた。


「「あいこでしょっ!しょっ!しょっ!」」


なかなか決着がつかないし、周りの人が何事かと注目しはじめた。


そろそろ止めた方がいいかなと思ったとき……


「行くぞ」


耳元で、低く甘い声が聞こえた。


驚く暇もなく、手を引かれる。


そうしたのは、もちろん……。


「四郎くん?」

「しっ。いまのうちだ」


ぎゅっと力の入る、大きくてしなやかな手。


引き寄せられて、大きく胸がはねる。


人ごみの中へ紛れた途端、彼は駆け出した。


あたしの手を、引いたまま。


「少しだけ走るぞ」


屋台の電球や提灯の灯りの中を、あたしたちは走った。


過ぎ去っていく赤やオレンジの光が、横に伸びていくように見えた。




< 199 / 379 >

この作品をシェア

pagetop