神様なんて信じないっ!~イケメンと妖怪、召喚しちゃいました~
悪いのは、妖怪だけじゃない。
苦しめられた人間は、同じように違う立場の人間を苦しめる……。
四郎くんは黙って、オロチをにらみつける。
『それに、武力蜂起したのも、お前たちの勝手だ。
哀れだな。
お前が総大将になり、農民たちを扇動しなければ、彼らももう少し生き延びられたものを……』
オロチのひとつの首が鎌首をもたげ、赤い舌をのぞかせる。
『そう思わぬか?天草四郎時貞。
お前さえおらねば、あの4万人弱のキリシタンは死なずに済んだ』
「…………」
『自らの死をもって、彼らに償おうとは思わぬか』
オロチはゆっくりと近づいてくる。
あたしは四郎くんを見上げる。
敵は、四郎くんの心の闇に入り込もうとしている。
彼の弱点をつき、言葉で傷つけて……。
「ダメだよ、四郎くん。
聞いちゃダメ」
濡れた浴衣の袖をぎゅっと引っ張ると、四郎くんは一瞬こちらを見た。
その口元は……かすかに口角が上がっていた。