腕枕で朝寝坊
それも、紙袋に窮屈そうに並べられてる小箱たちは、何千円もする高級ブランドや並ばなくちゃ買えないような人気店のものばっかり。
あとは丁寧に包まれたオリジナルラッピング。これ、絶対手作りだよね。
…分かってるよ、私だって大人なんだから。
仕事の付き合いで彼がチョコをもらう事に妬くほど子供じゃない。
でもさ。でもでも。
『ただの義理チョコ』と切り捨てるにはどれもこれも気合いが入りすぎてませんか?
建前は義理でも下心籠ってる物いくつかありますよね、絶対。
それもこの量。
前日でこれって事は明日にはいったいどれだけもらってくるワケ?
その中に義理を装った本命は幾つあるの?
それ以前に、明日は直球で本命チョコ渡しに来る人もきっといるよね。
「…紗和己さん、モテるなあ…」
じっと紙袋の中身を覗き込んで、ぽろり溢した私に紗和己さんの眉が困ったように少し下がった。
「全部義理ですよ。仕事の付き合いでもらっただけです」
「そうかなあ。それに、明日は本命チョコだって渡しに来る人いるんじゃない?」
「もし居たとしても、お断りして受けとりませんよ」
つまらないヤキモチだと自分でも分かってる。
紗和己さんが他の女の子の本命チョコを受けとるはずもないし
義理チョコは義理チョコとしてしか見ていない事も充分に分かってる。
どんなチョコが来ようと、紗和己さんの私への想いは揺らぎない事ぐらい分かってるよ。
けど。けど。
「…こんなにいっぱいあると…私のなんか埋もれちゃいそう…」
やっぱりこのチョコの山は面白くないよー。