腕枕で朝寝坊
なめらかに溶けたチョコにくぐらせたバナナを食べながら、紗和己さんも溶けそうな笑顔で私に話す。
「これは楽しくていいですね。僕、バレンタインがすごく好きになりました」
私も。私もだよ、紗和己さん。
こんなバレンタインの過ごし方があるなんて、こんな特別な過ごし方があるなんて、思いもしなかった。
昨日のイジケ虫はどこへやら。
ふたりきりで特別な甘いチョコを食べることを提案してくれた紗和己さんの気持ちが嬉しくて。
私はニコニコ顔が綻ぶのが止まらない。
「イチゴもオススメ。はい、紗和己さん、あーん」
ゴキゲンで私が差し出したチョコのイチゴを口にした紗和己さんが、嬉しそうに恥ずかしそうにそれを食べる。
「じゃあお返しに僕も。はい、あーん」
お返しに差し出されたチョコのしたたるマシュマロを食べて、私の顔がこの上ないほど幸せにとろけた。
「あま~い。美味しい~」
ほこほことチョコの香りで満たされた空間は、甘さ全開幸せ100パーセントで笑顔が止まらない。
どんなに彼がチョコをもらっても埋もれない、ふたりだけの特別なチョコレイトスマイル。
来年のバレンタインもきっと、この笑顔は止まらない。
【おわり】