腕枕で朝寝坊




海老やら蟹やらいっぱい入れた海鮮の寄せ鍋に舌包みを打って、紗和己さんの用意してくれたとっておきの吟醸酒まで頂いて。



お腹も心もホコホコに満たされた私たちは、あとはのんびり除夜の鐘が鳴るのを待った。


炬燵に似つかわしくミカンを食べたりしながら、テレビなど見つつゆったりお喋り。


こんななんて事の無い時間が、ふたりで居ると云うだけでかけがえの無い贅沢なものになる。




あったかい。幸せ。幸せ。……だけど。



ふたりが入ってる炬燵はひとり暮らし用のサイズのもの。正方形のテーブルは一辺にひとりが座るのに丁度いい幅で。

当然、私と紗和己さんは角を挟んでそれぞれ一辺に座ってる。



…これって、なんか…くっつきにくいかも。



だって。せっかくクリスマスであんなに距離が縮んだのに。紗和己さんの温もりを知ったのに。


もうちょっとくっつきたいなぁ。この距離、近いけどちょっと遠いよ。


せめて隣り合って座りたいけど、この炬燵の幅じゃふたり並ぶのは無理だし。



そんな事を考えながらチラと横目で紗和己さんを見ると、彼はすました顔してお茶を飲んでる。


…紗和己さんて肉食系って自分では言ってたけど、やっぱ草食系だよね。

……私が猛獣過ぎるのかな。



もうすぐ鳴り始める除夜の鐘を前に、私の頭は煩悩でモヤモヤし始める。早く鳴れ除夜の鐘。煩悩消し去って下さい。



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