恋の糸がほどける前に
中学のときに一度だけ、クラスの仲良しグループで私の部屋でテスト勉強したことがあって。
そのメンバーに水原もいたから、そのとき以来だと思う。
こうして、私の家の前に一緒にいるのは。
「おー、自分でも驚いた。案外覚えてるもんだな。……じゃ、おつかれ。また来週」
「うん、おやすみ」
私の言葉に「ん」と短く返して、水原はふわりと笑う。
くるりと私に背を向け、来た道を戻ろうとする水原の背中を見たら、ふいに大事なことを言い忘れていたことに気が付いて。
「うおっ!」
咄嗟に水原の袖を掴むと、思いのほか強く引っ張ってしまったようで、水原が驚いたような顔をして振り返った。
「あ、ごめん!ひっぱりすぎた!」
慌てて掴んだ袖を離すと、水原は一度不思議そうな顔をして、だけどすぐに笑ってくれた。
「あはは、すげーびびったわ!なに、何かあった?」
「や……、その、ね」
「ん?」
さっきは脳より先に手が動いていたから、こんな恥ずかしくなるなんて考えてなかった。