恋の糸がほどける前に

……送ってくれてありがとう。

今日は楽しかった。


……伝えたいことは、それだけなのに。

どうしてこんなにドキドキしてるの!

言おうとしてるのは、全然恥ずかしい内容じゃないでしょ。

むしろお礼を言うのは人として最低限のマナーだよ。

……うん、そうだ、義務だよ。

よし、言おう!


「お、送っ」

「あ、そだ」


勇気を出して、顔を上げて声を出したら。

……見事に、ハモった。

あれ、今って私が喋るターンだったよね!?


「あはは、同時」

「水原もなにか言うことあるの?」

「あるある。たいしたことじゃないんだけどさー、……今日、ありがとな、って!」

「え」

「三浦のおかげでカップルメニュー食べれたしー、楽しかったし!中学のころからもっとメシとか行けばよかったよなー」


うんうん、とひとり頷きながらそう言った水原が、

「また行こうな」

と屈託なく笑うから。


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