恋の糸がほどける前に
「……私も」
さっきまで恥ずかしがっていたのが嘘みたいに、簡単に言葉が口から零れてきた。
「私も、楽しかったよ。……送ってくれてありがとう」
ありがとうが言えたら。
……自然に、笑顔になれた。
「また美味しいもの食べに行こ!」
「……え?あ、おう」
「気を付けて帰ってねー!」
ちゃんとお礼が言えて、水原からも嬉しい言葉をもらえて。
なんだか、心がすごく温かかった。
……片想いって、こんなに楽しくていいのかな。
幸せで、いいのかな。
だんだん小さくなる、水原の後ろ姿を見送りながら、私はそんなことを考えていた。